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健診「異常なし」でもだるい理由|甲状腺と鉄の隠れ不足セルフチェック

目次

朝、ベッドの縁に座ったまま起き上がれずにいる女性
健康コラム 体の数字

健診「異常なし」でもだるい理由|甲状腺と鉄の隠れ不足セルフチェック

健康診断の血液検査は9項目。そこに甲状腺もフェリチンも入っていません。「異常なし」は調べた範囲の話です。いま保険で調べられるものと、診察室でどう伝えれば検査してもらえるかをまとめました。

公開
2026年9月
読了目安
約14分
おもな出典
日本内分泌学会/The Journal of Nutrition

朝、目が覚めた時点でもう疲れている。

寝ていないわけではありません。むしろ休みの日は、昼まで寝ている。それでも月曜の朝には戻っていない。

前は面白かったはずのものが、そこまで面白くない。録画したまま見ていない番組が溜まっていく。人と会う約束を、理由もなく少し先に延ばす。返信しないといけないメッセージが、既読のまま何日か経っている。

やる気の問題だと思ってきました。

健康診断は、今年も「とくに問題ありません」でした。血液検査の結果表も、赤い字はどこにもありません。数値は全部、基準値の中に収まっています。

健診の結果表を手に持ち、すべて基準値内の数字を見ている女性
赤い字はどこにもない。それでも、だるさは続いている

先に、答えから書きます。

健診で調べていない、3つ

甲状腺鉄の貯金(フェリチン)飲んでいる薬。この3つは、だるさや気分の落ち込みに関わるのに、定期健康診断では調べていません

そして3つとも、いまから調べられます。甲状腺と鉄は症状があれば保険が使えて、飲んでいる薬にいたっては採血すら要りません。

「うつの原因は、ほぼ全員が持っているウイルスらしい」という研究の話も出てきます。数字は本物です。ただその検査はまだ受けられません。だから、いま調べられる3つからお渡しします。

だから誰かに話しても、だいたいこう返ってきます。

「疲れてるんじゃない」
「季節の変わり目だからね」
「気にしすぎだよ」

そのたびに、そうかもしれない、と思って終わります。

調べていないものが、あります

ここで一つ、知っておいていただきたいことがあります。

健康診断で調べているのは、体のごく一部です。

会社の健診で測っている血液の項目は、多くて十数種類。体の中で起きていることの、ほんの入り口だけです。そして「だるさ」や「気分の落ち込み」に関係する項目のうち、いくつかは最初から測られていません

測っていないものは、当然ですが、異常として出てきません。

「異常なし」の意味

「全部調べて何もなかった」ではなく、「調べた範囲では何もなかった」という意味です。この2つは、かなり違います。

この記事でお伝えすること

「うつ病の原因は、ほぼ全員が持っているウイルスかもしれない」——そんな研究もあります。数字としては本物です。ただ、その検査はまだ受けられません

一方で、いま調べられるものは、ちゃんとあります。しかもそのいくつかは、健診では測っていないものです。

この記事で分かること

  • どれが保険で調べられて、どれが自費なのか
  • どれを優先して、どれは後回しでいいのか
  • 診察室で、どう伝えれば検査してもらえるのか

最後の一つが、実はいちばん大事かもしれません。「だるいんです」とだけ伝えても、「疲れでしょう」で終わってしまうことがあるからです。

先に、大事なお願いを一つ

この記事は、心の側の不調を否定するものではありません

体に原因が見つかったからといって、心の問題ではなかった、ということにはなりません。両方が重なっていることもあります

すでに通院されている方へ

心療内科や精神科にかかっている方は、この記事を読んで、自己判断で通院や薬をやめたり変えたりしないでください。検査を受けたいときも、まずは今かかっている先生にご相談いただくのが、いちばん安全です。

気分の落ち込みが強い方、消えてしまいたいという気持ちがある方は、検査よりも先にご相談ください。
こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556
よりそいホットライン 0120-279-338(24時間・通話無料)


いま、ウイルスの話が広がっています

ここで一つ、寄り道をさせてください。近年こんな研究が出ています。

うつ病の起こりやすさに、ほぼ全員が持っているウイルスが関わっているかもしれない

読んで、二つのことが引っかかると思います。うつ病がウイルスで起きるのか、ということ。そして「ほぼ全員が持っている」とはどういうことか、ということ。

後ろのほうから見ていきます。

そのウイルス、あなたも持っています

このウイルスは、ヒトヘルペスウイルス6といいます。

名前は聞き慣れないかもしれませんが、起こす病気のほうはご存じのはずです。突発性発疹。赤ちゃんが生まれて初めて高い熱を出し、熱が下がったあとに全身に発疹が出る、あれです。

日本ではほとんどの子どもが、2歳になるまでにこのウイルスに感染します。つまりあなたも、おそらく持っています

そして、ここからが少し意外なところです。このウイルスは、一度感染すると体から出ていきません。熱も発疹も治ったあと、体の中に住み着いたまま、一生いっしょにいます

住んでいる場所が、また変わっています。鼻の奥、においを感じる神経が集まっているあたりです。脳のすぐ手前にあたる場所です。

何が分かったのか

東京慈恵会医科大学の近藤一博教授らのグループが、このウイルスが持っているある物質を見つけ、SITH-1と名づけました。

うつ病の方と、そうでない方を比べたところ、こんな結果が出ています。

  • SITH-1の影響を受けている方は、うつ病になりやすさが12.2倍
  • うつ病の方の79.8%が、その影響を受けていた

近藤一博(東京慈恵会医科大学ウイルス学講座)/iScience 2020年5月21日号

さらに2024年には、続きの報告が出ています。SITH-1の働きやすさには人によって差があり、その差を生んでいる部分が見つかった、というものです。同じウイルスを持っていても、影響の出やすい人と出にくい人がいる。「なりやすい体質」が受け継がれる仕組みの一つかもしれない、という話です。

うつ病は長いあいだ、心の側から語られてきました。そこに、体の側からの説明が一つ加わったことになります。

ただし、ここが大事です

ここで、期待を一度下ろしていただく必要があります。

この検査は、まだ受けられません

SITH-1を調べる検査は研究の段階にあり、測定に特別な技術が必要なため、一般の方が受けられるところまで来ていません。病院で「SITH-1を調べてください」とお願いしても、いまは対応してもらえません。

もう一つ、正確にお伝えしておきます。この研究は一つのグループによる報告です。「うつ病の原因はウイルスだと決まった」というところまでは、まだ来ていません。可能性を大きく広げた研究ではありますが、断定するには早い段階です。

それでも、この話には続きがあります

では、この話は「面白いけれど、いまの自分には関係ない」で終わりでしょうか。

そうではありません。

この研究がはっきりさせたのは、気分の落ち込みには、体の側から説明がつく部分があるということです。SITH-1そのものは、まだ調べられません。

けれど、血液検査でわかることが何もない、という意味ではありません

いま、この瞬間から調べられるものが、いくつかあります。しかもそのうちのいくつかは、毎年受けている健康診断では測っていないものです。

次の章から、その中身をお渡ししていきます。


でも、いま調べられるものはあります

まず、健康診断のことをはっきりさせておきます。

毎年受けているあの血液検査、何項目を調べているかご存じでしょうか

答えは、9つです

会社で受ける定期健康診断の血液検査は、法律で決まっています。中身はこれだけです。

健診の血液検査9項目と、血液から調べられる数百種類との対比図
この9つに、甲状腺もフェリチンも入っていない

以上です。全部で9つ。しかも医師の判断で省略できる項目もあるので、実際にはもっと少ないこともあります。

一方、病院で調べようと思えば、血液から分かることは数百種類あります。

つまり健診は、入口をのぞいているだけです。それ自体は悪いことではありません。多くの人を短時間で、病気の見落としが命に関わるものから優先して調べる。そういう設計になっているからです。

ただ、この9つの中に、だるさや気分の落ち込みに関係するものは、ほとんど入っていません

調べられる4つ

ここから具体的にお渡しします。次の4つです。

調べるもの健診に入っている?保険は効く?優先度
甲状腺入っていない症状があれば効く★★★
鉄の貯金(フェリチン)入っていない
(ヘモグロビンだけ)
疑いがあれば効く★★★
飲んでいる薬検査そのものが不要★★★
ビタミンD入っていない条件を満たさないと自費

上の3つは、今日から動けます。いちばん下だけ事情が違うので、あとで理由を説明します。

この順番には理由があります

優先度をつけたのは、調べやすさと、見つかったときの意味が違うからです。

甲状腺と鉄は、見つかれば手の打ちようがあります。しかも健診では測っていないので、「異常なし」と言われてきた方ほど、調べていない可能性が高い。ここから始めるのが理にかなっています。

飲んでいる薬は、そもそも採血が要りません。いま飲んでいるものを書き出して、医師や薬剤師に見てもらうだけです。お金もかかりません。

ビタミンDだけ、扱いが違います。理由はあとでお話ししますが、先に結論だけ言っておくと——急いで測らなくて大丈夫です。世の中では「測りましょう」とよく言われますが、この記事はそう言いません。

一度に全部やらなくて大丈夫です

4つ並べましたが、全部を同時に調べる必要はありません。

気になったもの、一つで十分です。

体の不調を調べるのは、思ったよりも気力がいります。予約を取って、時間を作って、うまく説明できるか不安になりながら診察室に入る。だるさが続いているときに、それを4回繰り返すのは現実的ではありません。

一つ調べて、違ったら次を考える。それでいいと思います。

次から、一つずつ見ていきます。


① 甲状腺 ― のどにある、小さな臓器

のどぼとけの少し下に、蝶が羽を広げたような形の臓器があります。重さは15〜20グラムほど。甲状腺といいます。

ここが出しているホルモンは、体のアクセルにあたります。心臓を動かす速さ、体温、食べたものをエネルギーに変える速さ。そういったものを全部、このホルモンが調節しています。

アクセルの踏み込みが弱くなると、体はゆっくりになります。

症状が、気分の落ち込みとそっくりです

甲状腺の働きが落ちているとき、こんなことが起こります。疲れやすい、だるい。やる気が出ない。集中できない、忘れっぽい。気分が沈む。いくら寝ても眠い。

並べてみると、お気づきかと思います。はじめに書いたこととほぼ同じです。

だからこそ、甲状腺の不調は気分の落ち込みと間違われます。心療内科に通っているうちに、あとから甲状腺のほうだったと分かる。そういうことが実際に起きています。

見分けるヒントが、あります

ただ、甲状腺の場合だけに出やすい症状もあります。ここが手がかりです。

気分の落ち込みでも起こる症状と、甲状腺のときに出やすい症状を左右に並べた比較表
右側に思い当たるものがあれば、それが調べる理由になる

とくに「去年より寒がりになった」は、自分では気づきにくいのに、周りから言われて初めて分かることがあります。

思っているより、多いです

甲状腺の働きが少し落ちている状態は、一般の人の4〜15%にみられるとされています。

7人に1人から、25人に1人。

女性に多く、年齢が上がるほど増えていきます。珍しい病気ではありません。職場を見渡して、何人かはいる計算になります。

そして、健診では測っていません

ここが肝心なところです。

さきほど見たとおり、定期健康診断の血液検査9項目に、甲状腺は入っていません

つまり毎年「異常なし」と言われ続けていても、甲状腺については一度も調べられていない可能性があります。

基準を外れているのに、治療の対象にならない人がいます

もう一つ、知っておいていただきたいことがあります。

甲状腺の検査では、TSHという数値を見ます。これは「もっとホルモンを出して」と甲状腺に指示を送る側のホルモンで、甲状腺の働きが落ちると、指示が強まってこの数値が上がります

TSHの目安を3段階で示した帯グラフ。正常・様子見・治療検討の境目
およそ4.5から10のあいだが、空いている

ここに入る方は、「基準からは外れているけれど、すぐに治療するほどではない」と説明されることがあります。医学的には妥当な判断です。ただ、症状があるのに様子見になるという状況は起こりえます。

この場合でも、数値が分かっていること自体に意味があります。原因の候補が一つ見えているのと、何も分からないままとでは、次の一手が変わってくるからです。

調べ方

症状があれば、保険で調べられます

内科で「だるさが続いているので、甲状腺を調べてほしい」と伝えれば、採血で分かります。特別な準備も、絶食も要りません。

もし数値に問題が見つかった場合、不足しているホルモンを補う薬があります。ただし、飲むかどうか、いつから始めるかは医師が判断するところです。自己判断で何かを始める必要はありません。


② 鉄 ― 「貧血なし」は、鉄が足りている意味ではありません

健康診断の結果表に、こう書かれていたとします。

血色素量(ヘモグロビン) 13.2 g/dL 基準値内

貧血ではありません。よかった、と思うところです。

ところがこの結果は、鉄が足りていることを意味していません

財布の中身と、貯金

体の中の鉄は、2か所に分かれています。

一つは、いま働いている鉄。 血液の中で酸素を運んでいる分です。健診で測るヘモグロビンは、これを見ています。財布の中身にあたります。

もう一つは、蓄えてある鉄。 肝臓などに保管されている予備です。これをフェリチンといいます。貯金にあたります。

ここで大事なのは、減る順番です。

鉄が減る順番を3段階で示した図。貯金が先に空になり、財布は後から減る
貯金が先に空になり、財布はしばらく無事

鉄が足りなくなってくると、体はまず貯金を取り崩します。財布の中身を減らすわけにはいかないからです。酸素を運ぶ仕事は止められません。

そして財布が減り始めたとき——つまりヘモグロビンが下がって「貧血」と言われたときには、貯金はとっくにゼロになっています。

健診は、財布しか見ていません

定期健康診断の貧血検査は、血色素量と赤血球数の2つだけ。フェリチンは入っていません。

つまり健診では、貯金がゼロになっていても分かりません。財布に千円入っていれば「問題なし」と出ます。

この状態を、隠れ貧血と呼ぶことがあります。貧血の一歩手前、あるいは何年も手前で止まっている状態です。

鉄がないと、気分を保つ物質が作れません

鉄の仕事は、酸素を運ぶことだけではありません。

気分を安定させる物質をつくるときにも、鉄が要ります。

材料になる栄養をきちんと食べていても、鉄がなければ、その材料を組み立てる作業が進みません。工場に資材はあるのに、道具がない状態です。

だから鉄が足りないとき、体のだるさだけでなく、気分のほうにも出てくることがあります。

思い当たるものは、ありますか

鉄が足りないときのサインは、だるさ以外にもあります。意外なものが並びます。

  • 氷が食べたくなる(冷たいものではなく、氷そのものをガリガリ食べたくなる)
  • 脚がむずむずして、夜になると落ち着かない
  • 立ちくらみがする
  • 階段で動悸や息切れがする
  • 爪が平たくなった、反ってきた
  • 髪が抜けやすい
  • のどに何か詰まっているような感じがする
夜、冷蔵庫の前で製氷皿から氷をつまんで食べている女性
夏でもないのに、氷そのものを食べたくなる

上の2つは、言われるまで鉄と結びつかない方が多いところです。とくに。夏でもないのに、製氷皿の氷をそのまま食べたくなる。心当たりがあれば、それは調べる理由になります。

女性は、とくに

月経のある方は、毎月まとまった量の鉄が体から出ていきます。食事から取り込める鉄の量には限りがあるので、出ていく分が入ってくる分を上回る状態が、何年も続くことがあります。

若い女性ほど鉄が足りていない、というのは、こうした事情によるものです。

調べ方

貧血の疑いがあれば、保険で調べられます

内科で「健診ではヘモグロビンは正常でしたが、フェリチンも見ていただけますか」と伝えてください。この言い方が大事で、ただ「貧血が心配です」だけだと、ヘモグロビンだけ測って終わることがあります。

費用は、3割負担で600円程度が目安です。

もし不足していた場合、鉄を補う方法があります。ただし鉄は、多すぎても体に負担がかかります。自己判断でサプリメントを長く飲み続けるのではなく、数値を見ながら医師にご相談いただくのが安全です。


③ 飲んでいる薬と、季節

ここだけ、採血が要りません。お金もかかりません。

いま飲んでいるものを、書き出してみてください

処方されている薬、市販薬、サプリメント。ぜんぶです。

そしてそれぞれをいつから飲み始めたか、思い出せる範囲で横に書いてみてください。

食卓に薬の箱やサプリを並べ、ノートに書き出している手元
飲んでいるものと、飲み始めた時期を書き出す

だるさや気分の落ち込みが始まった時期と、どれかの飲み始めが重なっていないでしょうか

薬の中には、副作用として気分の落ち込みやだるさが報告されているものがあります。たとえばこうしたものです。

  • 炎症を抑えるステロイドの薬
  • 一部の血圧の薬
  • 花粉症などで使う、眠気の出やすい薬
  • ホルモンに関わる薬
  • 睡眠薬や抗不安薬(日中まで効果が残ることがあります)

お薬市場のコラムでも、いくつか個別に扱っています。

ただし、絶対にやめないでください

自分の判断で中断しないこと

思い当たる薬があっても、自分の判断で飲むのをやめないでください。とくにステロイドの薬は、急にやめると体に強い負担がかかります。血圧の薬も、睡眠薬も、勝手に中断すると別の問題が起きます。

やることは一つだけです。書き出したメモを持って、処方した医師か、薬局の薬剤師に見せてください。

「この時期からだるさが出ているのですが、関係はありそうですか」

それだけで十分です。判断はそちらに任せて構いません。飲み合わせや量の調整で済むことも、よくあります。

季節のほうは、どうでしょう

もう一つ、時期の話です。だるさが出てきたのは、いつごろからでしょうか。

日が短くなり始めると気分が落ちる、という方は少なくありません。夏の疲れが出る時期とも重なります。この季節の不調については、秋バテの記事で詳しく扱っています。

ビタミンDの話を、正直にします

日照が減る季節の話になると、必ず出てくるのがビタミンDです。日光を浴びると体の中で作られる栄養素で、不足すると気分が落ちる、とよく言われます。

実際、日本人のビタミンDについては、こんな調査があります。

100人のうち98人が色分けされた図。日本人のビタミンD不足の割合
5,518人を調べたら、98%が足りていなかった

ほぼ全員です。さらに意外なことも分かっています。年齢が低い人ほど、足りていませんでした。 ビタミンD不足は高齢の方の問題だと思われがちですが、逆でした。

そしてもう一つ。血液の中を調べたところ、しいたけなど植物由来のビタミンDは、ほとんど見つかりませんでした。見つかったのは、日光や魚など動物由来のものばかり。干ししいたけを食べれば大丈夫、とはいかないようです。

それでも、急いで測らなくて大丈夫です

さて、ここで立ち止まります。98%が足りていない、ということは、どういう意味でしょうか。

それは、足りていないこと自体は、あなたの不調の説明にならないということです。

だるさのない人も、元気な人も、同じように足りていません。100人いたら98人がそうなのですから、「あなたが不調な理由」にはなりません。甲状腺や鉄とは、ここが決定的に違います。

さらに、費用の問題もあります。ビタミンDの血液検査は、骨粗しょう症と診断されている方でなければ保険が効きません。自費だと1,500円から3,500円ほどかかります。

ですから、この記事の結論はこうです。ビタミンDは、急いで測らなくて大丈夫です。

世の中では「測りましょう」とよく言われます。でも、順番があります。甲状腺と鉄を先に調べてください。 そちらは保険が効いて、見つかれば意味があります。

日光については、測るより先にできることがあります。昼休みに15分外に出る。それだけで十分に価値があります。


医師に、こう伝えてみてください

ここまで読んで、調べてみようと思われたとします。内科を予約して、診察室に入って、こう言ったとします。

「なんだか、ずっとだるいんです」

これで検査に進めれば良いのですが、「疲れでしょう」「様子を見ましょう」で終わることがあります

医師が不親切なわけではありません。情報が足りていないのです。

診察室では、3つが知りたい

短い診察時間のなかで、医師が判断の材料にしているのは、おおむねこの3つです。

診察室で伝えるべき3要素と、そのまま使える例文を示した図
「だるい」には、この3つが入っていない

「だるい」という言葉には、この3つが入っていません。だから話が前に進みません。逆に言えば、この3つを入れるだけで、まったく違う面談になります

そのまま使える言い方

甲状腺を調べてほしいとき

「3か月ほど前から、朝起きた時点で疲れが取れていない状態が続いています。仕事は続けられていますが、帰宅後に何もできず、休みの日はほぼ寝ています。健診では異常なしだったのですが、甲状腺を調べていただけますか。去年より寒がりになった気もしています」

鉄を調べてほしいとき

「半年ほど前から、だるさが続いています。健診ではヘモグロビンは正常だったのですが、フェリチンも見ていただけますか。氷をよく食べたくなるのと、夜になると脚がむずむずすることがあります」

薬の影響が気になるとき

「この薬を飲み始めた時期と、だるさが出てきた時期が重なっています。関係はありそうでしょうか

※ 飲んでいるものを書き出したメモを見せる

長く話す必要はありません。この程度で十分です。

診察室で医師にメモを見せながら話している女性
メモを見せるだけで、話は進みやすくなる

持っていくと話が早いもの

健診の結果表。できれば過去2〜3年分。飲んでいるもののリスト。いつから、どう変わったかを書いたメモ。

とくに過去2〜3年分の健診結果は、あると強いです。

一枚だけでは「基準値内」で終わる数値も、並べると動いていることがあります。3年かけて、基準の中でじわじわ下がっている。その傾きは、一年分の紙からは見えません。

捨ててしまった方は、勤務先や健診機関に問い合わせると、再発行してもらえることがあります。

どこへ行けばいいか

まずは内科で構いません。

甲状腺も鉄も、一般の内科で採血できます。そこで異常が見つかれば、必要に応じて専門の科を紹介してもらえます。

最初から専門科を探して、予約が数か月先で動けなくなるより、近くの内科で一度採血するほうが早く進みます。

それでも「疲れでしょう」と言われたら

食い下がる必要はありません。ただ、もう一言だけ添える余地はあります。

「念のため、一度だけ数値を見ておきたいのですが」

それでも検査に進まなかった場合、別の医療機関にかかっても構いません

失礼なことでも、わがままでもありません。相性や方針は医師によって違います。一度断られたからといって、調べる必要がなくなったわけではないのです。

すでに通院されている方へ

心療内科や精神科にかかっている方は、まず今の主治医にご相談ください。「体のほうも一度調べておきたいのですが」と伝えれば、必要な検査を出してもらえることも、内科を紹介してもらえることもあります。

通院を止めたり、薬を変えたりする話ではありません。調べる先を一つ増やす、というだけの話です。


よくある質問

甲状腺も鉄も、まとめて一度に調べてもらえますか

できます。採血は一度で済みます。腕に針を刺す回数が増えるわけではありません。ただし、医師が「両方を調べる理由がある」と判断した場合です。前の章の伝え方で、気になっている症状を両方お話しいただくと通りやすくなります。

健康診断のオプションで追加できますか

できることが多いです。人間ドックや任意の健診では、甲状腺やフェリチンをオプションとして選べるところがあります。ただしこの場合は自費になります。症状があって医療機関を受診するほうが、保険が使えるぶん安く済むことがあります。

鉄は、サプリメントで摂ればいいのでは

まず調べることをおすすめします。理由は二つあります。一つは、足りているのに飲んでも意味がないこと。もう一つは、鉄は多すぎても体に負担がかかることです。また、鉄が足りない背景に別の原因が隠れていることもあります。補うだけで済ませると、そちらを見逃します。数値を見てから決めるのが確実です。

自宅でできる検査キットはどうですか

手軽さは利点です。ただ、結果が出たあとに相談する相手がいないという弱点があります。数値が出ても、それをどう読むか、次に何をするかは医療機関で判断することになります。結局そこへ行くのであれば、はじめから受診したほうが早く、保険も使えます。

SITH-1の検査は、いつか受けられるようになりますか

現時点では分かりません。研究は続いていますが、一般の医療機関で受けられる時期の見通しは立っていません。待つ必要はない、というのがこの記事の立場です。いま調べられるものから動いていただくほうが確実です。

調べても、何も見つからなかったらどうすればいいですか

それでも前進です。理由はこのあとの最後の章でお話しします。


おわりに ― 見つからなくても、気のせいではありません

健康診断の結果表が悪いわけではありません。あの紙は、聞かれたことに正確に答えているだけです。「この9項目はどうですか」と。

ただ、それ以外は聞かれていない。だから、甲状腺が下がっていても、鉄の貯金が空になっていても、黙っています。

「異常なし」は、調べた範囲の話でした。

はじめにお話しした、録画が溜まっていくことも、返信が遅れていることも、体からの返事だったのかもしれません。数字ではない形で、しかもずいぶん前から。

それでも、見つからないことがあります

正直にお伝えしておきます。甲状腺を調べて、鉄を調べて、飲んでいる薬も見直して。それでも何も見つからないことがあります。

そのとき、こう思われるかもしれません。やっぱり気のせいだったのか、と。

そうではありません。

調べて何も出なかったこと自体が、一つの情報です。体の側の候補が消えたということは、次に見るべき場所が絞られたということです。心の側の負担なのか、生活の積み重ねなのか、まだ名前のついていない何かなのか。少なくとも、手当たり次第に探す段階は終わります

そして何より、だるさが実在することは変わりません。検査で出ないものが、存在しないわけではないのです。

何年と、採血1本

「疲れてるんじゃない」と言われ続けて、何年経ったでしょうか。

その何年ぶんを、採血1本で確かめられることがあります。10分もかかりません。費用も、保険が使えれば数百円から千円程度です。

採血を終え、腕を押さえながら窓の外を見ている女性
何年ぶんかを、10分で確かめられることがある

次に病院にかかるときに、一言そえてみてください。

「健診では異常なしだったのですが、甲状腺と、フェリチンも見ていただけますか」

たったこれだけで、見てもらえるものが変わることがあります。

お薬市場スタッフスタッフ

今日の数字は、学会の資料と、国の基準から拾ってきました。健康の情報はたくさん流れていますが、迷ったときは出典が書いてあるほうを見ていただければと思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ご注意(免責)

本記事は、一般的な健康情報をお伝えするものです。診断や治療に代わるものではありません。体の状態や検査の必要性には個人差があり、ここに書いた数値の目安も、医療機関や測定方法によって異なることがあります。

すでに心療内科・精神科にかかっている方は、自己判断で通院や服薬を中止・変更しないでください。検査を希望される場合も、まず主治医にご相談ください。

次のような場合は、様子を見ずに医療機関にご相談ください。

  • 気分の落ち込みが2週間以上続き、日常生活に支障が出ている
  • 眠れない日が続いている、または眠りすぎる状態が続いている
  • 食欲が大きく変わった、体重が意図せず増減している
  • 消えてしまいたいという気持ちがある

つらい気持ちが強いときは、検査より先にご相談ください。

こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556
よりそいホットライン 0120-279-338(24時間・通話無料)

サプリメントを含め、何かを始める際は医師や薬剤師にご相談ください。

出典・参考資料

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