トリコモナスとは?男女で症状が異なる⁉治療法や予防法を解説
目次

トリコモナス症はトリコモナスという原虫によって膣や尿道に起こる性感染症(STD)です。俗説として、コンドームを使用しているのに感染したり、性行為をしていないのに感染したりすると考えられています。
これは本当でしょうか?この記事では、トリコモナス症の概要・症状・影響・検査・治療・予防について解説します。また、治療に効果的な医薬品をご紹介します。トリコモナス症を含めたSTDに不安がある方、治療を検討している方は参考資料として役立ててみてください。
トリコモナス症の概要
トリコモナス症とは何か、原因となるトリコモナス原虫とは何かについて解説します。
● トリコモナス症とは何か
トリコモナスという原虫によって膣や尿道に起こる性感染症(STD)です。
大抵は性交により感染します。症状として膣が過敏になったり、分泌物が出たり、排尿痛がみられたりします。
女性では膣トリコモナスを起こし、膣が痛み、泡状で黄緑色の生臭いおりものがみられるのが特徴です。男性では症状が出にくいのですが、排尿時の痛み、尿道から泡状の分泌物がみられることがあります。
分泌物を顕微鏡で調べ、トリコモナス原虫を検出することで診断が可能です。
女性は大抵の場合、抗菌薬を1回服用、男性は抗菌薬を5~7日間服用して治療します。淋菌感染症など他のSTDを合併することがあります。
● 原因となるトリコモナス原虫とは
単細胞動物で原生動物鞭毛虫(べんもうちゅう)類に属します。原虫とは単細胞の微生物で、ゾウリムシ・アメーバなどの仲間です。鞭毛虫とは鞭毛を鞭(むち)打つように動かしながら運動する原虫です。
白血球よりも大きく、膣上皮よりも小さいのが特徴です。健康な女性の約10%に寄生しており、産婦人科受診者の17.6%がトリコモナス原虫を保有しているというデータもあります。
トリコモナス症の症状
トリコモナス症の症状が出るまでの期間と男女別の症状を解説します。
● 症状が出るまでの期間は5~28日
女性の場合は5~28日、男性の場合は10日前後です。
ただし男性は大抵症状が出ません。
● 女性と男性では症状が異なる⁉
女性の場合は、膣から泡状で黄緑色の生臭いおりものが出るのが特徴的です。
外陰部が過敏になって、性交時に痛むことがあり、ひどくなると炎症を起こし、陰唇が腫れることもあります。また排尿時の痛みや頻尿を来すこともあります。
男性の場合は大抵症状がなく、あっても排尿時の軽い痛み、尿道から少量の分泌物がみられる程度です。

トリコモナス症による影響
日常生活への影響、道量の場合のリスクについて解説します。
● 日常生活での影響
トリコモナス症と診断された場合、必ずパートナーも検査が必要です。男性で症状がみられない場合でも、性交時にパートナーに感染を起こす可能性があります。
両者に感染が認められた場合、同時に治療しないと、一方が治っても相手からうつされるといった「ピンポン感染」を起こしてしまいます。感染を認めた場合、治癒するまでは性交を控えましょう。
まれに手指・タオル・便座などから感染することもあるため注意が必要です。十分に手洗いする、タオルは共有しない、使用後に便座を消毒するなどで予防してください。
● 治療せずに放置した場合のリスクは大きい
トリコモナス症の女性が未治療のまま妊娠すると、以下のようなリスクがあります。
- •早産・妊娠早期破水を起こす
- •まれに産道感染を起こす
- •未熟産が増加するという報告もあります
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またHIV感染のリスクを高めるとされています。さらに子宮頸癌の患者にトリコモナス症が多いという報告もあります。いずれにしても重大なリスクを伴いますから、ちゃんと治療を受けましょう。
トリコモナス症の診断と検査
トリコモナス症の診断方法、自宅での検査について解説します。
● 診断方法は男性と女性で異なる
膣感染症がみられる女性の場合は婦人科を受診してください。おりものを顕微鏡で調べてトリコモナス原虫を確認すれば、すぐに診断できます。結果が不明瞭な場合は、サンプルを数日間培養してから調べることがあります。
トリコモナスのDNAまたはRNAを検査することも可能です。ときに細菌の遺伝物資の量を増幅する技術を応用した核酸増幅検査を行うこともあります。
男性で尿道炎などからトリコモナス症が疑われる場合、泌尿器科を受診してください。朝一番の排尿前に陰茎の先から出る分泌物を採取し、顕微鏡で調べたり、培養したりして診断します。また尿の培養検査でトリコモナス原虫を検出できることもあります。ただし男性の場合、女性よりもトリコモナス原虫を検出するのが困難です。
● 自宅でできる検査キットもある
市販の性病検査キットを利用すれば、自宅でトリコモナス症の検査ができます。
一つの検査キットで複数のSTDがチェックでき、大抵はトリコモナス症も検査が可能です。 以下の手順で申し込めます。
- •インターネットで検査キットを購入
- •膣分泌物・尿を採取
- •所定の宛先へ郵送
- •結果までの期間は2~7日
- •結果をインターネットや書面宅配・郵便局留めの郵便で確認
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ただし検査キットの結果はあくまでも参考としてください。
陽性が出たからといっても診断が確定したわけではなく、必ず医療機関を受診して確認しましょう。
陰性の場合もトリコモナス症が否定されたわけではなく、症状が続く場合は医療機関を受診しましょう。
トリコモナス症の治療法
トリコモナス症は自然治癒するのか、医薬品による治療方法、治療に効果的な医薬品について解説します。
● トリコモナス症は自然治癒しない
トリコモナス症が自然に治癒することはありません。
医療機関を受診して治療することが必要です。
● 医薬品による治療が必要
抗菌薬のメトロニダゾールまたはチニダゾールを使って治療します。
女性の95%は、1回服用するだけで治癒が可能です。1回目の治療が不成功に終わった場合、同じ薬を連続して5日間服用すると効果があります。ただしパートナーも同時に検査・治療を受けることが必要です。
男性は抗菌薬を5~7日間服用して治療します。それができなければ、女性はまた感染を受ける可能性があります。どうしてもパートナーが検査を受ける見込みがない場合、女性にパートナー用の薬を処方することがあります(迅速パートナー療法)。
トリコモナス症の治療は、必ず医療機関を受診後に始めてください。
検査キットを使った自己判断だけで、薬を購入して治療するといったことはやめましょう。
● 効果的な医薬品を2つご紹介
治療に用いられる医薬品をご紹介し、用法・用量、重要な副作用、禁忌について解説します。
- •有効成分:メトロニダゾール
- •用法・用量:1回250mgを1日2回、10日間服用
- •重要な副作用:白血球減少・好中球減少・肝機能障害(定期的な血液検査が必要)
- •禁忌:脳・脊髄に器質的な疾患がある人、妊娠3カ月以内の女性
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②チニバ
- •有効成分:チニダゾール
- •用法・用量:2,000mgを1回経口投与、あるいは1回200mg、1日2回、7日間服用
- •重要な副作用:白血球減少(定期的な血液検査が必要)
- •禁忌:血液疾患がある人、脳・脊髄に器質的な疾患がある人、妊娠3カ月以内の女性あるいは妊娠している可能性のある女性
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トリコモナス症の予防方法3つ
トリコモナス症を含めてSTDの予防には、以下の方法が効果的です。
- •コンドームを常に正しく使用する
- •不特定多数のパートナーとの性交を避ける
- •STDが疑われたら、迅速に検査・治療を受ける
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まとめ
トリコモナス症はトリコモナスという原虫によって膣や尿道に起こる性感染症(STD)です。
女性の場合は、膣から泡状で黄緑色の生臭いおりものが出るのが特徴的です。男性の場合は大抵症状がありません。
おりものを顕微鏡で調べてトリコモナス原虫を確認すれば診断できます。おりものや尿の培養検査でトリコモナス原虫を検出できることもあります。市販の性病検査キットがありますが、あくまでも参考としてください。
女性は婦人科、男性は泌尿器科を受診して、診断・治療を受けましょう。抗菌薬のメトロニダゾールまたはチニダゾールを使って治療します。トリコモナス症を含めてSTDの予防には、常に正しくコンドームを使用するなどが効果的です。
治療薬の特徴
| 商品名 | フラジール | チニバ |
| 有効成分 | メトロニダゾール | チニダゾール |
| 用法・用量 | 1回250㎎を1日2回、 10日間服用 | 2,000mgを1回経口投与、あるいは1回200㎎、 1日2回、7日間服用 |
| 重要な副作用 | 白血球減少・好中球減少・肝機能障害 | 白血球減少 |
| 禁忌 | 脳・脊髄に器質的な疾患がある人、 妊娠3カ月以内の女性 | 血液疾患がある人、 脳・脊髄に器質的な疾患がある人、 妊娠3カ月以内の女性あるいは 妊娠している可能性のある女性 |
