ビールで石は流せません。夏の尿路結石が「水分をとっていた人」にも起きる理由
目次

深夜の救急外来には、夏になると増える患者さんがいます。背中を押さえ、脂汗をかいて、うずくまるように運ばれてくる。診断は、尿路結石。
汗をかいた日の一杯目。「ビールも水分のうち」「むしろ石が流れる」。そう言われて育った方は、少なくないと思います。
残念ながら、それは逆です。ビールは飲んだ以上の水分を体から追い出し、そのうえ結石の材料になる尿酸を増やします。夏の夜、キンキンに冷えた一杯で水分補給を済ませた気になっている人ほど、尿路結石の準備が進みます。
この記事のいちばん大事なところを先に言ってしまいます。尿路結石は、水分の「量」ではなく「中身」で分かれる病気です。「ちゃんと水分はとっていたのに石ができた」という人が毎年たくさん出るのは、そのためです。飲んでいた中身が、防ぐ側ではなく育てる側だったのです。
この石を一生に一度でも経験する人は、男性で7人に1人、女性で15人に1人。学会のガイドラインに載っている推計です。「そんなに多いのか」と思うかもしれませんが、今この瞬間に結石を抱えている人は10万人あたり429人、約0.4%。つまり「いつか順番が回ってくるかもしれないが、まだ自分の番ではない」くらいの距離感です。その順番を遠ざけられるかどうかが、この記事の話になります。
「夏と薬」「フォシーガと脱水」に続く、夏シリーズの3本目としてお読みください。
この記事で分かること
- •ビール・甘い飲料・濃いお茶が結石を育てる仕組み(量ではなく中身の話)
- •水を飲むことがガイドラインで「強く勧められる」予防である根拠(再発率12.1%対27%の試験)
- •1日2リットルの正しい中身と、飲むタイミング
- •結石発作が夏に約2倍になる理由と、夜中〜明け方に来やすい仕組み
- •カルシウムは制限ではなく摂るという、食事の常識の入れ替え
- •様子を見てはいけない救急のサインと、受診したら何をされるか
※本記事は2026年8月時点の一般的な情報提供です。診断・治療に代わるものではありません。症状には個人差があります。気になる症状がある方は、医師・薬剤師にご相談ください。
「水分はとっていた」人が、なぜ石をつくるのか
ここがこの記事の出発点です。同じ「水分補給」でも、結石を育てる側に回る飲み方があります。夏に多い代表格を3つ挙げます。
「ビールで石を流す」は、残念ながら俗説です。飲んだ直後は尿が増えるので、流れそうな気がします。でもアルコールの利尿作用は飲んだ以上の水分を体から追い出すため、数時間後にはむしろ脱水に傾きます。さらにアルコールは代謝の過程で尿酸値を上げるので、尿酸結石やカルシウム結石の材料を増やす方向にも働く。汗をかいた日の「水分補給はビールで」は、結石の観点では二重に逆効果です。
甘い清涼飲料のがぶ飲みも、防ぐ側には数えられません。果糖やショ糖は、尿の中に結石の材料が排泄されるのを促し、結石の形成を促進することが指摘されています。夏の水分補給が毎回ジュースやスポーツドリンクになっている方は、日常の1本を水か麦茶に置き換えるだけで、防ぐ側に一歩寄れます。
緑茶の濃いやつを、やかんで飲む習慣。お茶は健康的に見えますが、結石のいちばん多い成分「シュウ酸」の供給源でもあります。ガイドラインに載っているお茶100gあたりのシュウ酸量は、玉露1,350mg、抹茶・煎茶1,000mg、番茶670mg、ほうじ茶286mg。同じ「お茶」でも、5倍近い開きがあります。日常の数杯なら気にする必要はありませんが、「水代わりに濃い緑茶を1日中」という飲み方は、シュウ酸を積み増します。水代わりの主役には水やほうじ茶、麦茶のような、シュウ酸の負担が軽いものを。
同じ「水分補給」でも、働きが違います
| 防ぐ側の一杯 | 育てる側の一杯 | |
|---|---|---|
| 主役にする | 水・麦茶・ほうじ茶。レモン水(クエン酸)も味方 | 甘い清涼飲料・エナジードリンクのがぶ飲み |
| お茶類 | ほうじ茶(286mg)・麦茶を水代わりに。緑茶や紅茶は1日数杯のたしなみまで | 玉露(1,350mg)・抹茶や煎茶(1,000mg)を水代わりに1日中※100gあたりのシュウ酸量 |
| お酒 | 飲むなら同量の水をセットにして、水分補給には数えない | 「ビールで石を流す」。利尿と尿酸上昇で二重に逆効果 |
| タイミング | 寝る前・起き抜け・汗の前後にコップ1杯ずつ | 喉が渇いてから、まとめて一気飲み |

では、「防ぐ側」の飲み物をどれだけ飲めばいいのか。そして、そもそもなぜ夏に集中するのか。ここから先が、その答えです。
夏に尿路結石が増えるのには、理由があります
中身の話をしたので、次は「なぜ夏なのか」です。尿路結石は、尿の中の成分(シュウ酸やカルシウム、尿酸など)が濃くなりすぎて、結晶になり、育ったものです。イメージは、煮詰まった鍋の底にできる焦げつきに近い。水分が減って煮詰まるほど、できやすくなります。
だから夏です。汗をかくと、体は水分を失い、尿は濃く、少なくなります。これは印象論ではありません。ガイドラインには「四季のある地域では、季節の変動と尿路結石の疼痛発作には関係がある」と書かれ、根拠として引かれた報告では四季のある地域の結石発作は夏に約2倍、気温が20℃を超えると発作が増えるとされています。外気温の上昇と結石の発生についても、関係が示唆されています。
目安の数字もあります。1日の尿量が1,000mLを切ると結石ができる危険度が上がり、2,000mL以上で下がる。夏の屋外で水をあまり飲まずに過ごした日の尿量は、簡単に下のラインを割り込みます。
そして、1日のうちで尿がいちばん濃くなるのは、寝ている間です。就寝中は水分補給が止まり、汗だけが出ていく。発作が夜中から明け方に多いのは、偶然ではありません。
もうひとつ、知っておくと得をする話があります。ガイドラインには「高温環境への曝露により2〜3か月後に結石の症状をきたす」という報告が紹介されています。石は一晩ではできません。猛暑のさなかに水を切らした日々のツケが、涼しくなった秋口に痛みとして返ってくることがある、ということです。逆に言えば、この夏に飲んだ一杯は、秋の自分を助けます。
夏の夜、体の中で起きていること
「水を飲む」は気休めではなく、学会が強く勧める予防法です
「結局、水を飲めって話でしょ」と思った方にこそ、この章を読んでほしいのです。その「水を飲め」には、思っているよりずっと強い裏づけがあります。
日本の尿路結石症診療ガイドラインは、再発予防のための飲水指導を「十分な根拠があり、強く勧められる」という最上位の位置づけで扱っています。根拠になった試験のひとつでは、結石を経験した人を「1日2,000mL以上の飲水指導を受けたグループ」と「受けなかったグループ」に分けて5年間追跡しました。結果、再発した人の割合は指導群で12.1%、非指導群で27%。水の飲み方を変えただけで、再発が半分以下になったのです。
(今持っている人は約0.4%)
(5年間の追跡調査)
(食事以外に飲水2L以上)
薬でもない、手術でもない、ただの水。それがガイドラインの最高ランクに座っている。生活習慣の指導でここまで強い数字が出るものは、医療全体でもそう多くありません。逆に言えば、結石は「防ぎにいける側」の病気だということです。
防ぐ側の飲み方。「1日2リットル」の中身
目標を先に言うと、尿の量で1日2,000mL以上。そのためには食事に含まれる水分とは別に、飲み物として2,000mL以上が目安です(欧米の指針では2,250〜3,000mLとしている例もあります)。ペットボトルでいえば2リットルボトル1本。数字だけ見ると多く感じますが、コツは量より配分です。
①目覚めの一杯と、寝る前の一杯。国の「健康のため水を飲もう」推進運動が昔から勧めている型です。前の章のとおり、いちばん危ないのは就寝中。寝る前のコップ1杯で夜の濃縮をやわらげ、起き抜けの1杯で朝の濃い尿を流す。結石予防の観点では、この2杯がいちばん費用対効果の高い2杯です。
②一気飲みより、こまめに。まとめて1リットル飲んでも、余った分は短時間で尿として出ていくだけです。コップ1杯(200mL前後)を1〜2時間おきに。デスクにボトルを置く、トイレに立ったら飲む、など「行動とセットにする」と続きます。
③汗をかく前後は、前倒しで。入浴の前後、運動の前後、炎天下の外出の前。「喉が渇いてから」では、体はもう脱水側に傾いています。
自分の尿量を測る必要はありません。目安は色です。薄い麦わら色なら足りている。濃い黄色〜茶色っぽいなら、煮詰まっています。夏の午後にトイレで色が濃かったら、その場でコップ1杯。それくらいの運用で十分です。

食事は、ひとつだけ常識を入れ替えてください
食事の細かい制限を並べるつもりはありません。ただ、ひとつだけ、多くの人が逆に覚えている常識があります。
「結石=カルシウムの摂りすぎ」ではありません。むしろ逆です。かつてはカルシウム制限が指導されていましたが、今のガイドラインは1日600〜800mgのカルシウムを摂るよう勧めています。理屈はこうです。カルシウムを制限すると、本来なら腸の中でシュウ酸と結合して便として出ていくはずだったシュウ酸が、行き場を失って体に吸収されてしまう。その結果、尿の中のシュウ酸が増えて、かえってシュウ酸カルシウム結石ができやすくなる。結石が怖くて牛乳や小魚を避けていた方は、逆走していたことになります。
あとは2つだけ。シュウ酸の多い食材(ほうれん草など)は、茹でると減らせます。おひたしにして、かつお節(カルシウム源)をかける昔ながらの食べ方は、理にかなっています。そして動物性タンパク質と塩分の摂りすぎは控えめに。肉中心・味濃いめの食生活は、尿酸と尿中カルシウムを増やす方向に働きます。
その背中の痛み、尿路結石の前兆かもしれません
ここからは、すでに痛みが出ている方・出たことがある方のための章です。結石の痛み(疝痛発作)には、かなりはっきりした特徴があります。
場所は、背中と脇腹。片側の腰背部から脇腹にかけての激痛で、太ももの付け根や下腹部、男性では陰部のほうへ放散する(響く)ことがあります。石が尿管を下っていくにつれて、痛む場所も上から下へ移動するのが特徴です。
痛み方は、波。20〜60分続く耐えがたい痛みが、間欠的に押し寄せます。じっとしていられず、体勢を変えても楽にならない。冷汗、顔面蒼白、吐き気や嘔吐を伴うことも多い。「人生でいちばん痛かった」と表現する人が多いのは、この痛みです。
血尿はヒントになりますが、すべての結石で出るわけではありません。目で見える血尿がなくても、結石は否定できない。逆に、痛みがなくても健診の尿検査で見つかることもあります。
この場合は、救急です
結石の多くは命に関わりませんが、例外がひとつだけあります。次に当てはまるときは、朝まで様子を見ないでください。
夜間・休日でも受診してほしいサイン
- •激痛に発熱・悪寒が重なった。石が尿の流れをせき止めたまま感染が起きる「結石性腎盂腎炎」の疑いがあります。短時間で敗血症(全身の重い感染)へ進みうる、一刻を争う状態です
- •尿がほとんど出ない(特に、腎臓がひとつの方・両側に結石がある方)
- •嘔吐が止まらず、水分がまったく摂れない
- •痛み止めを使ってものたうち回る痛みが引かない
「石はいつか出るから我慢」が通用しないのはこの4つです。発熱を伴う結石は、我慢強さが命取りになりえます。

病院では、思ったより大ごとになりません(自然排石という選択肢)
「行ったら即手術されるのでは」と受診をためらう方へ。実際の標準は、もっと穏やかです。
まず痛みにはNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)が第一選択とガイドラインに明記されています。つまり最初の治療は注射や座薬の痛み止めです。そして長径10mm以下の尿管結石の多くは、自然に出てくることが期待できるため、水分を摂りながら排石を待つ経過観察が、標準的な選択肢のひとつとされています。5mm以下なら、そのまま出てくる可能性はさらに高い。
つまり多くのケースで、治療の中身は「痛みを抑えて、水を飲んで、石が出るのを待つ」。手術や体外衝撃波の出番は、大きい石・出てこない石・感染を伴う石に限られます。受診は「大ごとにするため」ではなく、「大ごとかどうかを見極めてもらうため」です。石のサイズと位置さえ分かれば、あとは安心して待てます。
ひとつだけ、痛みが去った後の注意を。結石は再発の多い病気です。カルシウム結石では2年で約11%、15年で約39%が再発します。「出たから終わり」ではなく「出てからが予防の始まり」。この記事の飲み方は、まさに再発予防のためにあります。
薬を飲んでいる人へ。結石はメタボの隣にいます
最後に、当店のお客様に関係の深い話を2つ。
ひとつ。ガイドラインは「尿路結石症はメタボリックシンドロームの一疾患と捉えることができる」とまで書いています。肥満や糖尿病があるとインスリンの働きが鈍り、尿が酸性に傾いて、尿酸結石ができやすくなる。つまり、ダイエットや血糖の記事を読みに来ているあなたは、結石の統計の中では「近い側」にいます。減量そのものは結石リスクを下げる方向に働くので、取り組みはそのままに、水だけ足してください。
ふたつ。尿を増やす薬・汗をかきやすくする状況と夏の組み合わせは、この記事の「煮詰まり」を加速します。利尿薬を飲んでいる方、フォシーガのようなSGLT2阻害薬で尿量が増えている方、筋トレでプロテイン(動物性タンパク)を大量に摂っている方は、人より早く1,000mLラインに近づくと考えて、意識的に一杯を足す。詳しくは夏シリーズの前2作(「夏と薬」「フォシーガと脱水」)が補完します。
もし健診で「尿酸値が高い」と言われたことがあるなら、それは結石の話とつながっています。当店では、尿酸値の管理に使われる薬も扱っています。ただし、これは結石を溶かす薬でも、水の代わりになる薬でもありません。血液検査の数字を見て医師と決めるものです。
※価格は2026年8月時点の一例で、規格・数量により異なります。海外で流通する製品を含み、日本国内で承認されているものではありません。効果や副作用の感じ方には個人差があります。これらは尿酸値が高いと診断された方が医師の管理のもとで使う薬で、結石そのものの治療薬ではありません。使用の可否は医師・薬剤師にご相談のうえ、個人輸入の制度と自己責任の原則をご理解のうえでご検討ください。
尿酸値が正常な方には関係のない薬ですし、結石の大半は尿酸ではなくカルシウムを含むタイプです。この記事でお伝えしたいのは、あくまで最初の一杯の話。薬の出番は、そのあとに医師が判断します。
よくある質問
あわせて読みたい記事
おわりに
尿路結石は、痛みの激しさのわりに、予防の話がとても地味な病気です。水を、選んで、こまめに飲む。それだけ。でもその地味な習慣に、再発を半分以下にした、学会が最上位で勧めるだけの実績があります。
そして、冒頭のビールの話に戻ります。飲んではいけない、という話ではありません。水分補給の枠に数えず、同じ量の水をセットにする。それだけで、その一杯は「育てる側」から降ります。
防ぐために寝る前の一杯から、始められます。そしてその一杯が効いてくるのは、たいてい少し先です。この夏の水分が、秋のあなたを守ります。もし背中の激痛に発熱が重なったら、この記事のことを思い出して、我慢せずに救急へ。
結石の薬を売っていない店が、それでもこの記事を書いたのは、夏の脱水があらゆるお客様の足元にあるからです。ご不明な点がありましたら、お気軽にお問い合わせください。スタッフ一同、お待ちしております。
参考・出典
- •日本泌尿器科学会ほか編: 尿路結石症診療ガイドライン 2013年版(第2版)(生涯罹患率・CQ28飲水指導・再発率12.1%対27%・尿量2,000mL・CQ08/CQ09・CQ06メタボ・カルシウム600〜800mg等)urol.or.jp
- •日本内科学会雑誌: 尿路結石症診療ガイドラインの解説(2017)jstage.jst.go.jp
- •MSDマニュアル プロフェッショナル版: 尿路結石(疝痛の特徴・自然排石・尿量2.5L)msdmanuals.com
- •MSDマニュアル 家庭版: 尿路結石msdmanuals.com
- •環境省: 熱中症環境保健マニュアル(夏の脱水と水分補給)wbgt.env.go.jp
- •国土交通省: 「健康のため水を飲もう」推進運動(目覚めの一杯・寝る前の一杯)mlit.go.jp
※本記事は情報提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。症状の感じ方・経過には個人差があります。持病で水分制限のある方は主治医の指示を優先してください。症状が続く場合や不安がある場合は、自己判断で対処を続けず、医師・薬剤師にご相談ください。





