バレニクリンは出荷停止されて使えない?ジェネリックがおすすめ
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新しい禁煙治療薬であるチャンピックスが出荷停止のために使えない状態です。しかしジェネリック医薬品は使用でき、これを用いた禁煙治療が望まれます。本記事では、バレニクリンの作用メカニズム、禁煙治療での成功率、他の禁煙治療法との比較、副作用や注意点、禁煙治療のヒントについて解説します。
新しい作用機序の禁煙治療薬として「バレニクリン」が注目されています。ところが主要メーカーが製造する「チャンピックス」が2021年6月から出荷停止されてしまいました。ただしバレニクリンのジェネリック医薬品は使用可能であり、これを用いた禁煙治療が望まれます。
本記事では、バレニクリンの作用メカニズム、禁煙治療での成功率、他の禁煙治療法との比較、副作用や注意点、禁煙治療のヒントについて解説します。またバレニクリンを有効成分とするジェネリック医薬品をご紹介します。これから禁煙しようとしている方は、ぜひ役立ててみてください。
バレニクリンとは?
バレニクリンは、ニコチンを含まない経口禁煙補助薬です。化学的特性、効能・効果、用法・用量について解説します。
〈バレニクリンの化学的特性〉
バレニクリンの有効成分はバレニクリン酒石酸炎です。英語名はVarenicline Tartrate
白色~薄黄色の結晶性の粉末で、水に溶けやすく、N,N-ジメチルアセトアミドに溶けにくく、エタノールにはほとんど溶けません。
〈効能・効果〉
効能・効果は「ニコチン依存症の喫煙者に対する禁煙の補助」です。使用前にニコチン依存症かどうかを「ニコチン依存症に係るスクリーニングテスト」により診断します。また、患者に禁煙の意思があることを確認することが必須です。
〈用法・用量〉
- •第1~3日目:0.5mgを1日1回食後に経口投与
- •第4~7日目:0.5mgを1日2回朝夕食後に経口投与
- •第8日~12週目:1mgを1日2回朝夕食後に経口投与
作用メカニズム
一般的に禁煙が難しい理由、バレニクリンが禁煙に役立つ仕組みについて解説します。

〈禁煙が難しい理由〉
禁煙が難しいのは体も心も依存しているからです。禁煙ができないのは、ニコチン依存症という病気のためです。
たばこを吸うと、ニコチンが脳にあるニコチン性アセチルコリン受容体に結合し、快感を生む物質ドパミンをたくさん放出します。ところがニコチンはすぐに消えてしまうため、ドパミンもなくなります。
ドパミンによる快感を求めて、ニコチンつまりたばこが欲しくなり、依存症になるわけです。
ニコチン依存症から抜け出すのは、麻薬をやめるのと同じくらい難しいといわれています。
〈喫煙による満足感を抑える仕組み〉
バレニクリンは、脳内にあるα4β2ニコチン性アセチルコリン受容体に結合し、ニコチンを遮断して喫煙による満足感を抑制します(拮抗作用)。
つまりたばこを吸ってもドパミンが放出されず、快感を得られなくなるわけです。
〈禁煙をサポートする仕組み〉
ドパミンが急になくなると、離脱症状が出て、イライラしたり、ゆううつになったりします。その結果、たばこを切望するようになり、急に禁煙はできません。
禁煙をサポートするために、バレニクリンはニコチンにより放出されるよりも少量のドパミンを放出させ、禁煙による離脱症状やたばこに対する切望感を軽減します(刺激作用)。
禁煙治療での成功率
実際の治研での成果を表すデータ、他の禁煙治療法との比較を示します。
〈実際の治研での成果を表すデータ〉
国内後期第Ⅱ相用量反応試験
| 薬剤名 | 第9~12週の禁煙率 | 第9~52週の禁煙率 |
| バレニクリン1mg1日2回 | 65.4% | 34.6% |
| バレニクリン0.5mg1日2回 | 55.5% | 28.9% |
| バレニクリン0.25mg1日2回 | 54.7% | 27.3% |
| プラセボ(偽薬を用いた群) | 39.5% | 23.3% |
バレニクリン1mg1日2回投与群はプラセボ群と比較して、第9~12週の禁煙率が有意に高くなりました。また第9~52週の禁煙率も、プラセボ群と比べて優れていました。
〈他の禁煙治療法との比較〉
厚生労働省が実施した「ニコチン依存症管理料による禁煙治療 の効果等に関する調査」によると、治療終了9カ月後の禁煙率は27.3%でした。この結果と比べると、バレニクリン治療群の第9~52週の禁煙率34.9%は優れているといえるでしょう。また、ニコチネルを用いた禁煙治療と比較してみました。
| 3カ月後の禁煙率 | 1年後の禁煙率 | |
| バレニクリン | 80.0% | 68.4% |
| ニコチネル | 80.0% | 56.7% |
ニコチネルと比べるとバレニクリンのほうが、やや優れているといえるでしょう。
副作用や注意点
バレニクリン使用時の副作用、服用する際の注意事項について解説します。
〈バレニクリン使用時の副作用〉
まず重大な副作用を示します。
- •皮膚粘膜眼症候群(頻度不明だが、まれ)
- •血管浮腫(頻度不明だが、まれ)
- •意識障害(頻度不明だが、まれ)
- •肝機能障害・黄疸(頻度不明だが、まれ)
その他の副作用を示します。
- •不眠症(頻度16.3%)
- •異常な夢(13.0%)
- •頭痛(11.6%)
- •感情不安定(0.5~5%)
- •不安(0.5~5%)
〈服用する際の注意事項〉
- •統合失調症・双極性障害・うつ病等の精神病の精神症状を悪化させることがあります。
- •重度の腎機能障害がある患者は、バレニクリンの血中濃度が高くなるおそれがあります。
- •妊婦または妊娠している可能性がある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること
- •授乳中の女性には、治療上の有益性、母乳栄養の有益性を考慮し、母乳の継続あるいは中止を検討してください。
- •小児に対する効果・安全性は確立していません
- •高齢者では腎機能が低下していることが多いため、用量を調節してください。
商品紹介
バレニクリンを主成分とする商品を2つご紹介します。
①バレニスマート
チャンピックスのジェネリック医薬品です。
1錠0.5mg、1箱50錠入り
メーカー:Healing Pharma
発送国:インドなど
②バーニトリップ
チャンピックスのジェネリック医薬品です。
1錠0.5mg、1箱30錠入り
メーカー:Tripada Healthcare
発送国:インドなど
以下の関連ページもご覧ください。
禁煙治療のヒント
バレニクリンを用いて禁煙する要件、一緒に取り入れたいライフスタイルについて解説します。

〈バレニクリンを使用する際の最適なアプローチ〉
禁煙治療のためにバレニクリンを使用する際は、健康保険を使って診療ができます。保険診療の要件は以下のとおりです。
- •ニコチン依存症に係るスクリーニングテスト(TDS)で5点以上となり、ニコチン依存症と診断されている
- •35歳以上でブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年齢)が200以上
- •ただちに禁煙することを希望する
- •「禁煙治療のための標準手順書」にそって禁煙治療について説明を受けている
この際に重要なことは、しっかり禁煙を決心することです。ただ薬をのめばニコチン依存症が治るというわけではありません。禁煙しようとする意志が強くなければ、決して禁煙は成功しません。バレニクリンは、あくまでも禁煙をサポートする薬です。
〈一緒に取り入れたいライフスタイルの変更やアドバイス〉
「ライフスタイル別にみた1年後の禁煙率」の調査によると、禁煙率が高いライフスタイルは以下のとおりです。
- •食事時間:規則的
- •コーヒー摂取:飲む
- •運動習慣:している
- •睡眠:よく眠れる
- •たばこをやめたい気持ち:何でも従う、がんばる
- •家族の協力:あり
コーヒーを飲むほうが禁煙率は高いのが意外ですが、たばこを吸わない代わりにコーヒーを飲むということでしょうか?ただし、コーヒーの飲み過ぎには注意してください。
よくある質問
バレニクリンに関連するよくある質問とその回答をご紹介します。
Q1:チャンピックスの出荷停止はなぜですか?
A:2021年6月、バレニクリンを有効成分とする「チャンピックス」の出荷が突然に停止されました。これはチャンピックスの一部のロッドに、変異原性が懸念される不純物の混入が判明したからです。2023年11月現在も再開のめどは立っておりません。ただしジェネリック医薬品は出荷されていますから、こちらを利用すればよいでしょう。
Q2:バレニクリンは運転禁止ですか?
A:バレニクリンを服用すると、傾眠、意識障害の副作用がみられることがあり、自動車の運転はできません。
Q3:バレニクリンはニコチンが入っていますか?
A:バレニクリンにはニコチンは含まれておりません。ニコチネルにはニコチンが少量含まれており、ニコチンを段階的に減らしながら禁煙する薬です。バレニクリンはまったく作用機序が異なります。
まとめ
バレニクリンは、ニコチンを含まない経口禁煙補助薬です。ニコチンを遮断して喫煙による満足感を抑制します。同時に禁煙による離脱症状やたばこに対する切望感を軽減します。第9~12週の禁煙率は65.4%と良好です。禁煙外来を受診して治療の仕方を指導してもらい、ジェネリック医薬品を用いて禁煙治療するとよいでしょう。
本記事では、ジェネリック医薬品であるバレニスマート、バーニトリップをご紹介しましたので参考にしてください。

