いびきの治し方を探している方へ。市販グッズの前に確かめたい10のサイン
目次

いびきの原因と、睡眠時無呼吸症候群との見分け方を解説。10項目のセルフチェック、自宅でできる検査の費用、2026年6月に広がった保険の基準まで、学会と国の資料をもとに整理します。
「昨日のいびき、すごかったよ」
家族やパートナーからそう言われて、少し気まずい思いをしたことはありませんか。あるいは旅行や出張で同じ部屋に泊まった人に、遠慮がちに伝えられたことがあるかもしれません。
いびきは、自分では聞けません。だから指摘されたときにはじめて、「そんなにうるさいのか」と知ることになります。そして多くの方が、次にこう検索します。「いびき 治し方」「いびき 市販」。
その気持ちはとてもよく分かります。ただ、テープやマウスピースを買う前に、確かめておいたほうがいいことがあります。いびきは音の問題であると同時に、空気の通り道が狭くなっているという合図でもあるからです。
今回は、いびきと睡眠時無呼吸症候群について、学会や国の資料をもとに整理しました。責めるための記事ではありません。「自分はどこにいるのか」を知って、必要なら次の一歩に進むための記事です。
先に、立場を言っておきます。私たちは海外医薬品の通販の店です。いびきを止める薬は扱っていません。この記事の終わりで体重管理の商品を紹介しますが、それはいびきを直接どうにかするものではなく、原因のひとつに体重がある方のための選択肢です。つまり、この記事の答えの大半は、うちの商品棚の外にあります。だからこそ、お店の都合ぬきで、検査の順番の話を正直に書けると思っています。
スタッフこの記事の結論
- •日本には中等症以上の睡眠時無呼吸に当てはまる方が940万人以上いると推計される一方、CPAP治療を受けている方は約73万人にとどまります
- •いびきをかく方すべてが病気というわけではありません。分かれ目は「呼吸が止まっているかどうか」です
- •判断の目安になるのは、夜・朝・日中の3つの時間帯すべてに症状が出ているかという点です
- •2026年6月、CPAP治療が保険で受けられる範囲が広がりました。以前は対象外だった方も対象になっています
- •調べる入り口は自宅でできる簡易検査で、3割負担なら約3,000円です。入院は要りません
- •市販グッズは原因に合っていないと効きません。口を閉じるテープだけは、無呼吸がある方には勧められません
当てはまる人は940万人。治療している人は73万人

まず、数の話から始めます。
日本呼吸器学会によると、睡眠時無呼吸症候群は成人男性の約3〜7%、女性の約2〜5%にみられます。男性では40代から50代が半数以上を占めます。
一方で、治療が必要な段階に当てはまる方の推計はもっと大きくなります。日本国内で中等症以上に該当する方は940万人以上とされています。ところが、標準的な治療であるCPAPを受けている方は約73万人です。
数字には出典によって幅があります。潜在的な患者数を300万人以上とする資料もありますし、CPAPの処方数を40万以上とする資料もあります。ただ、どの資料をとっても共通していることが一つあります。
当てはまる人の数と、治療を受けている人の数が、大きく離れているということです。
なぜこれほど離れるのでしょうか。理由はおそらく単純です。いびきは自分では聞けませんし、眠っている間のことは自分では分かりません。日中に眠くなっても、「昨日遅かったから」「年齢のせいかな」と説明がついてしまいます。
つまり、気づく機会そのものが少ないのです。だから指摘されたことがあるという方は、すでに一歩リードしていると考えていただいて構いません。
分かれ目は「呼吸が止まっているかどうか」
いびきをかく方が全員、治療の必要な状態というわけではありません。ここははっきりさせておきたい点です。
いびきは、空気の通り道である上気道が狭くなり、そこを空気が通るときに粘膜が振動して鳴る音です。お酒を飲んだ日や、疲れている日、風邪で鼻が詰まっている日にだけ鳴るのであれば、一時的なものであることも多いです。
線が引かれるのは、呼吸が止まっているかどうかです。
医療の現場では、AHI(無呼吸低呼吸指数)という数字を使います。眠っている1時間あたりに、呼吸が止まったり浅くなったりする回数のことです。
| AHI(1時間あたりの回数) | 重症度 |
|---|---|
| 5未満 | 正常の範囲 |
| 5以上15未満 | 軽症 |
| 15以上30未満 | 中等症 |
| 30以上 | 重症 |
日本呼吸器学会では、AHIが5以上あり、かついびきや日中の眠気などの症状を伴うときに睡眠時無呼吸症候群と診断するとしています。
AHIが30ある方は、1時間に30回以上、呼吸が止まったり浅くなったりしています。8時間眠るとすれば、一晩で240回以上ということになります。
ここで一つ、知っておいていただきたいことがあります。眠っている時間と、休めている時間は同じではありません。
呼吸が止まると、血液中の酸素が減ります。体はそれを危険だと判断して、いったん覚醒し、息を吸い直します。本人にその記憶はありません。けれど脳は、そのたびに眠りから引き上げられています。
8時間眠っても疲れが取れないという感覚には、こうした背景があることがあります。
2026年6月、保険の線が「20回」から「15回」に下がった
ここまで見てきたAHIという数字について、知っておいていただきたい変更があります。
2026年6月の診療報酬改定で、CPAP治療を保険で受けられる基準が緩和されました。
| 項目 | 改定前 | 改定後 |
|---|---|---|
| 対象となるAHI | 20以上 | 15以上 |
| 簡易検査等での特例基準 | 40以上 | 30以上 |
背景にあるのは、AHIが15から20の範囲でも、高血圧や心血管の病気、脳卒中のリスクが上がることが繰り返し示されてきたことです。
これが何を意味するかというと、以前は「あと少しで基準に届かない」と言われて対象外だった方が、対象になったということです。
数年前に検査を受けて、「数値は出ているけれど保険の基準には届かない」と説明された記憶がある方は、もう一度相談してみる価値があります。
ちなみに、日本呼吸器学会の一般向けページには、現在も「AHIが20以上で日中の眠気などを認めるSASではCPAPが標準的治療」と書かれたままです。専門の学会の解説ページでも、改定の反映には時間がかかります。受診の際は、最新の基準で判断されるかを確認なさってください。
CPAPは、マスクを通して空気を送り込み、狭くなった気道を広げ続ける治療です。継続には定期的なモニタリング(使用時間や、治療中に残っている無呼吸の回数など)が必要とされています。
実際、いくらかかるのか
「保険が使えます」と言われても、金額が分からなければ動きようがありません。3割負担の場合の目安をまとめます。
| 項目 | 3割負担の目安 |
|---|---|
| 初診(問診・レントゲン・心電図など) | 3,000〜5,000円 |
| 簡易検査(自宅で一晩) | 約3,000円 |
| 精密検査(PSG・検査料のみ) | 約10,000〜11,000円 |
| 精密検査の入院費 | 上記に加算。個室を使うと総額6〜8万円になることも |
| CPAP(月額・継続中) | 4,000〜5,000円前後 |
| マウスピース(保険適用時) | 5,000〜30,000円(施設により差が大きい) |
金額は医療機関や、その月に受けた検査によって変わります。あくまで目安としてご覧ください。
注目していただきたいのは、入り口の簡易検査が約3,000円だという点です。自宅で一晩眠るだけで、入院も要りません。「調べるかどうか」で迷っている段階の負担としては、それほど大きくないはずです。
精密検査の金額に幅があるのは、検査料そのものは1万円ほどでも、そこに入院費が乗るためです。大部屋か個室かで総額はかなり変わります。気になる場合は、予約時に確認しておくと安心です。
保険のしくみは、広がる方向にも狭まる方向にも動いています
ついでにお伝えしておくと、この2026年6月の改定で変わったのはCPAPだけではありません。先発医薬品を選んだときに追加でかかる負担(選定療養)についても、同じタイミングで見直しが入っています。
▶ 「先発薬を選ぶと追加料金?」2026年6月から倍増した『選定療養』の仕組みを解説
一方で、市販薬と似た成分の薬を保険の対象から外すという案も、2027年に向けて議論が進んでいます。こちらは負担が増える方向の話です。
▶ OTC類似薬の保険適用除外はいつから?対象薬と負担増を解説【2027年予定】
保険のしくみは、毎年どこかが動いています。自分に関係のある部分だけでも知っておくと、受けられるはずの治療を取りこぼさずに済みます。 いびきと睡眠時無呼吸については、2026年6月の変更は範囲が広がる側でした。
ただ、この治療にたどり着くには、まず検査を受けて自分の数値を知る必要があります。その手前にある手がかりを、次に挙げていきます。
夜・朝・日中。3つの時間帯に出ているか

睡眠時無呼吸症候群の症状には、特徴があります。夜だけ、あるいは朝だけに出るのではなく、3つの時間帯すべてに現れるという点です。
ご自身に当てはまるものがないか、確かめてみてください。
夜の症状
- •大きないびきをかく。隣の部屋まで聞こえる、毎晩鳴っている、途中で音が止まることがある
- •息が止まっていると指摘されたことがある。これがもっとも重要なサインです
- •夜中に何度も目が覚める。トイレに行きたくて起きていると思っていても、実際は呼吸が止まって目が覚めていることがあります
- •寝汗をかく、寝相が悪い。朝起きると枕がずれている、布団が足元にある
朝の症状
- •起きたときに頭が痛い。両側が痛く、ほぼ毎日あり、午後には自然に治まるのが特徴です
- •口が乾いている、喉が痛い。枕元に水を置いている方は思い当たるかもしれません
- •熟睡した感じがない。長く眠ったのに、朝からすでに疲れている
日中の症状
- •強い眠気がある。会議中や乗り物の中で、こらえきれずに眠ってしまう
- •集中力が続かない、いらいらしやすい
- •物忘れが増えた気がする
とくに 2番の「息が止まっていると指摘された」は、他の項目とは重みが違います。ご家族にとっては、目の前で大切な人の呼吸が止まる、かなり怖い体験です。一度でも言われたことがあるなら、検査を受けることをおすすめします。
3つの時間帯にまたがって当てはまる項目があるようでしたら、一度きちんと調べてみる価値があります。
スタッフ放っておくと、心臓と脳のリスクが3〜4倍になる
ここは少し正直にお伝えします。ただ、脅かすつもりはありません。分かっていれば対処できるという話として読んでください。
日本呼吸器学会は、成人の睡眠時無呼吸症候群について次のように記しています。
日本呼吸器学会の記載
- •成人SASでは高血圧、脳卒中、心筋梗塞などを引き起こす危険性が約3〜4倍高くなり、特に、AHI30以上の重症例では心血管系疾患発症の危険性が約5倍にもなります。
夜のあいだ、酸素が下がるたびに体は緊張します。血圧を上げ、心拍を速くして、なんとか酸素を取り戻そうとします。それが毎晩、何十回も繰り返されます。
血圧の薬を飲んでいるのに数値が下がらないという方が、実は睡眠時無呼吸を抱えていたというケースもあります。
日中の眠気も、軽く見ないほうがいい症状です。学会は、日中の眠気が作業効率の低下、居眠り運転事故や労働災害の原因にもなると明記しています。
この危険は、数字にもなっています。警察庁が運転免許を持つ人を対象に行った調査では、睡眠時無呼吸症候群の疑いがある人は、そうでない人に比べて、居眠り運転を経験している割合が2.1倍、居眠りによる事故を経験している割合が2.6倍でした。
| 過去1年に居眠り運転をした人 | 過去5年に居眠り事故を起こした人 | |
|---|---|---|
| 呼吸に問題のない人 | 18.9% | 4.5% |
| 睡眠時無呼吸症候群と診断された人 | 35.0% | 10.1% |
| そのうち最も重い人(1時間に60回以上) | 51.5% | 14.5% |
信州大学の研究者が、診断のついた患者さんを調べた数字です。最も重い人では、2人に1人が過去1年に居眠り運転をしていました。
2003年2月、山陽新幹線の運転士が運転席で眠ったまま駅を通過する出来事がありました。あとになって、この運転士が重い睡眠時無呼吸症候群だったことが分かります。本人に自覚がないまま、ここまで来てしまう。そういう病気だということです。
ここまでは重い話ですが、続きがあります。同じ学会の資料に、こう書かれています。
日本呼吸器学会の記載
- •しかし、CPAP治療にて、健常人と同等まで死亡率を低下させることが明らかになっています。
治療をすれば戻せる、ということです。だからこそ、気づくかどうかが分かれ目になります。
痩せていても、女性でも起こる
「太っている人の病気でしょう」と思われた方もいるかもしれません。半分は当たっていますが、半分は違います。
たしかに肥満は大きな要因です。首まわりに脂肪がつくと、上気道は狭くなりやすくなります。
ただ、日本呼吸器学会は原因としてこう書いています。
日本呼吸器学会の記載
- •あごが後退していたり、あごが小さいこともSASの原因となり、肥満でなくてもSASになります。
日本人を含む東アジアの人は、欧米の方に比べて下あごが小さく、やや後ろに引っ込んだ位置にある傾向があるとされています。あごが小さいと、舌が収まるスペースが骨格的に狭くなります。眠って全身の筋肉がゆるむと、舌の付け根が気道に落ち込みやすくなります。
これは体重とは関係のない、生まれ持った骨格の話です。標準体型でも、痩せていても、当てはまる方はいます。
学会が挙げている原因は、肥満のほかに、扁桃が大きいこと、舌が大きいこと、鼻炎や鼻中隔弯曲といった鼻の病気、そしてあごの小ささです。
女性についても触れておきます。学会は、女性では閉経後に増加すると記しています。
女性の場合、いびきが目立ちにくいことがあります。そのかわりに「なんとなく疲れやすい」「夜中に何度も目が覚める」「気分が落ち込む」といった形で現れることがあります。これらは更年期の不調と似ているため、そちらだと考えて過ごしてしまうことがあります。
「いびきをかいている自覚がないから自分は違う」とは、言い切れないということです。
自宅で一晩、約3,000円。検査はそこから始まる

ここまで読んで、「調べたほうがいいかもしれない」と感じた方へ。手順をお伝えします。
まず、自宅でできる簡易検査があります。指や鼻にセンサーをつけて眠るだけの検査で、入院の必要はありません。機器を借りて自宅で一晩測り、返送する形が一般的です。
簡易検査で詳しく調べる必要があると判断された場合に、睡眠ポリグラフ検査(PSG)に進みます。こちらは一泊入院して、脳波や心電図、筋電図、血液中の酸素飽和度などを詳しく調べます。確定診断はこの検査で行われます。
何科に行けばいいのか迷われるかもしれません。呼吸器内科、耳鼻咽喉科、睡眠外来などが専門ですが、かかりつけの内科でも構いません。
伝え方も難しく考える必要はありません。
「睡眠時無呼吸の検査を受けたいのですが」
この一言で話が進みます。家族に指摘されたことがある、日中の眠気が強い、といった状況を添えるとさらにスムーズです。
市販グッズが効かないのは、原因が5つあるから
「いびき 市販」で検索される方は多いのですが、ここには落とし穴があります。いびきの原因はひとつではないので、原因に合っていないグッズは効かないのです。
いびきの原因として挙げられるのは、主に次のようなものです。
- •首まわりの脂肪(肥満)
- •扁桃が大きい
- •舌が大きい、舌の付け根が落ち込む
- •鼻炎や鼻中隔弯曲といった鼻の病気
- •あごが小さい、後退している
これに対して、手に入るものを並べると次のようになります。
| 手段 | 向いている原因 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 鼻腔拡張テープ(鼻の外に貼る) | 鼻づまり | 鼻の通りを物理的に広げるだけ。のどが原因のいびきには届かない |
| マウスピース(口腔内装置) | 舌やあごが原因 | 診断があれば保険で作れる。臨床研究の蓄積があり、軽症から中等症で使われる |
| 横向き寝グッズ・抱き枕 | 仰向けで悪化するタイプ | 症状をやわらげる工夫であって、原因への対処ではない |
| 口を閉じるテープ | ー | 睡眠時無呼吸がある方が使うと、呼吸を妨げる方向に働く可能性が指摘されています |
マウスピースは、市販品より歯科で作るほうが確実です
ドラッグストアにも似た形のものがありますが、歯科で型を取って作る口腔内装置は、睡眠時無呼吸症候群と診断されて医師の処方があれば保険が使えます。3割負担での費用は5,000円から30,000円ほどで、施設によって差があります。
下あごを少し前に出した状態で固定することで、舌の付け根が落ち込むのを防ぐという仕組みです。CPAPが合わなかった方の選択肢にもなります。
口を閉じるテープだけは、順番を間違えないでください
口呼吸を防ぐという触れ込みのテープがありますが、睡眠時無呼吸のある方が使うと危険な方向に働く可能性があります。呼吸が止まったときに、口からの逃げ道までふさいでしまうためです。
原因が分からないまま口をふさぐことには、リスクがあります。グッズを選ぶのは、原因が分かってからでも遅くありません。 そして原因を調べる入り口は、先ほどの約3,000円の簡易検査です。
CPAPは、始めるより続けるほうが難しい
ここは、あまり書かれないことなので触れておきます。
CPAPは効果のはっきりした治療です。ただし、続けられるかどうかが最初の関門になります。
使用の目安として、日本でも海外でも「1晩に4時間以上、それを評価期間の70%以上の日で」という基準が用いられています。ところが、この比較的ゆるやかな基準すら満たせていない方が46%から83%にのぼるという報告があります。日本の医療機関による10年間の追跡では、およそ31%の方が途中で使うのをやめたとされています。
数字に幅があるのは、対象や調べ方が施設によって違うためです。それでも共通して言えるのは、始めた人の全員が続けられているわけではないということです。
続かない理由として多いのが、鼻づまりです。CPAPは鼻から空気を送り込む治療なので、鼻が通っていないと苦しくなります。鼻炎や鼻中隔弯曲がある方は、先にそちらの治療をしたほうが結果的に続けやすくなることがあります。
この話をお伝えするのは、脅かすためではありません。うまくいかないときに「自分には合わなかった」で終わらせないでいただきたいからです。マスクの種類を変える、空気の圧を調整する、加湿を足す、鼻の治療を先にする。打てる手はいくつもあります。合わないと感じたら、やめる前に主治医に伝えてください。
スタッフ学会が挙げている生活の注意は、たった2つ

治療と並行して、生活の中でできることもあります。日本呼吸器学会が「生活上の注意」として挙げているのは、次の2つです。
日本呼吸器学会の記載
- •肥満者では減量することで無呼吸の程度が軽減することが多く、食生活や運動などの生活習慣の改善を心がけることが重要です。アルコールは睡眠の質を悪化させるので、晩酌は控える必要があります。
お酒との付き合い方を見直す
アルコールは、のどの筋肉をゆるめます。ゆるんだ筋肉は気道に落ち込みやすくなり、いびきや無呼吸が悪化しやすくなります。
飲んだ日だけいびきがひどいと言われる方は、この影響を受けている可能性があります。毎日晩酌をされている方は、週に何日か休む日をつくるところから始めてみてください。
睡眠薬とお酒の組み合わせについては、別の記事で詳しく扱っています。
▶ 睡眠薬+アルコール=死亡リスク?! 絶対NGな理由と安眠のための対策
体重と向き合う
首まわりの脂肪が減れば、気道が広がりやすくなります。学会も「減量することで無呼吸の程度が軽減することが多い」としています。
近年は、体重管理と睡眠時無呼吸の関係について研究が進んでいます。中等症から重症の睡眠時無呼吸があり、かつ肥満のある方を対象とした臨床試験では、体重が減るとともに無呼吸の回数も減ったことが報告されています(2024年・New England Journal of Medicine)。
ただし、この研究の対象は中等症から重症の睡眠時無呼吸があり、かつ肥満のある方です。すべての方に当てはまるものではありません。また、日本において、こうした薬剤に睡眠時無呼吸の適応はありません。あくまで体重管理という文脈での話としてお読みください。
もう一つ、大規模なデータベースを用いた研究も報告されています。肥満のある方およそ19万人ずつを比較した解析で、体重に関わる薬剤を使用していた群では、新たに睡眠時無呼吸と診断される割合が低かったという結果が示されました(2026年・Annals of the American Thoracic Society)。ただしこちらは過去の記録をさかのぼって調べた観察研究であり、因果関係を確かめたものではありません。「予防できる」と言い切れる段階ではない、という点は押さえておいてください。
首まわりの脂肪を含めた体重管理は、いびきに対しても意味のある取り組みです。お薬市場では、体重管理の選択肢となる商品をご用意しています。
※これらは体重管理を目的とした医薬品であり、睡眠時無呼吸症候群の治療薬ではありません。日本国内において、睡眠時無呼吸症候群への適応は承認されていません。服用の可否や続け方については、必ず医師にご相談ください。効果の現れ方には個人差があります。
リベルサスやゼニカルがどういう薬なのかについては、それぞれ詳しくまとめた記事があります。仕組みから知りたい方はこちらをご覧ください。
なお、体重が大きく減る過程では、一時的に抜け毛が増えることがあります。そちらについてもまとめています。
▶ 痩せたら、髪が抜けた。それは「戻る抜け毛」かもしれません
眠る姿勢を変えてみる
仰向けで眠ると、重力で舌の付け根が落ち込みやすくなります。横向きで眠ると軽くなる方もいます。
抱き枕を使う、背中側にクッションを置くなど、自然に横向きを保てる工夫を試してみてください。ただし、これは症状をやわらげる工夫であって、原因そのものへの対処ではありません。
眠りそのものを見直す
いびきや無呼吸とは別に、眠りが浅くなる原因が重なっていることもあります。ご自身がどのタイプに当てはまるのかを整理しておくと、受診のときにも話が早くなります。
よくあるご質問
いびきをかいていたら、必ず睡眠時無呼吸症候群なのでしょうか。
いいえ。お酒を飲んだ日や、疲れている日、鼻が詰まっている日だけ鳴るいびきは、一時的なものであることも多いです。分かれ目は「呼吸が止まっているかどうか」です。毎晩鳴っている、途中で音が止まる、日中の眠気があるといった場合は、調べてみることをおすすめします。
痩せているので関係ないと思っていました。
日本呼吸器学会は「あごが後退していたり、あごが小さいこともSASの原因となり、肥満でなくてもSASになります」と記しています。体重とは別の要因があります。
何科を受診すればいいですか。
呼吸器内科、耳鼻咽喉科、睡眠外来などが専門です。かかりつけの内科でも構いません。「睡眠時無呼吸の検査を受けたいのですが」と伝えれば話が進みます。
検査は入院が必要ですか。
まずは自宅でできる簡易検査から始められます。詳しく調べる必要がある場合に、一泊入院の睡眠ポリグラフ検査に進みます。
以前、検査で基準に届かないと言われました。
2026年6月に基準が緩和され、対象となるAHIが20以上から15以上になりました。以前対象外だった方が対象になっている可能性があります。もう一度ご相談ください。
検査や治療にいくらかかりますか。
3割負担の目安として、自宅でできる簡易検査が約3,000円、精密検査は検査料だけで1万円前後(別途入院費)、CPAPは継続中で月4,000〜5,000円前後です。医療機関やその月の検査内容によって変わります。
CPAPは続けられるものですか。
正直に申し上げると、始めた方の全員が続けられているわけではありません。「1晩4時間以上を70%以上の日で」という目安を満たせていない方が46%から83%にのぼるという報告があります。続かない理由で多いのは鼻づまりです。合わないと感じたら、やめてしまう前に主治医にご相談ください。マスクの種類や空気の圧を変えるなど、調整できることがあります。
市販のいびきグッズは効きますか。
原因によります。鼻づまりが原因なら鼻腔を広げるテープが合うことがありますし、マウスピース型の装置は医療機関でも使われています。ただし、口を閉じるタイプのテープは、睡眠時無呼吸がある方には勧められません。原因を確かめてから選ぶほうが確実です。
CPAPは一生続けるのですか。
減量などで状態が改善し、設定が変わることもあります。継続の判断は、検査結果をもとに医師と相談しながら決めていきます。
出典
- •千葉県警察「運転に大きな影響を与える睡眠障害」(警察庁「睡眠障害と安全運転に関する調査研究」の結果を引用)
https://www.police.pref.chiba.jp/menkyoka/licence_info-09.html - •藤本圭作「睡眠時無呼吸症候群と居眠り運転事故」信州医学雑誌 2004;52(2):131-132
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinshumedj/52/2/52_131/_pdf - •一般社団法人日本呼吸器学会「I-05 睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)」
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/i/i-05.html - •費用の目安は、複数の医療機関が公表している金額を参照しています / https://naishikyo.or.jp/sas/cost/
https://kobe-kishida-clinic.com/respiratory-system/sleep-apnea-syndrome/sas-cpap-insurance-cost/ - •終夜睡眠ポリグラフィーの診療報酬点数
https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_2_3_3_4%2Fd237.html - •厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00074.html - •Benjafield AV, et al. Estimation of the global prevalence and burden of obstructive sleep apnoea: a literature-based analysis. Lancet Respir Med. 2019
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31300334/ - •Malhotra A, et al. Tirzepatide for the Treatment of Obstructive Sleep Apnea and Obesity. N Engl J Med. 2024
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38912654/ - •Effects of semaglutide on obstructive sleep apnea risk and outcomes in patients with obesity. Ann Am Thorac Soc. 2026;23(4):584(掲載誌は購読者限定のため、内容を伝える医療ニュース記事へのリンクを掲載しています)
https://www.healio.com/news/pulmonology/20260506/glp1-agonists-reduce-risk-for-sleep-apnea-in-patients-with-obesity
あわせて読みたい|眠りの記事
おわりに
いびきは、まじめに働いている方ほど後回しになりがちです。仕事が忙しい、そのうち行く、家族に言われているけれど自覚がない。よく分かります。
けれど、この記事でお伝えしたかったのは一つだけです。いびきは、体からの合図であることがある、ということです。
そして幸いなことに、調べる方法は自宅の簡易検査から始められますし、2026年6月からは保険で治療を受けられる範囲も広がりました。CPAP治療で死亡率が健常人と同等まで下がることも分かっています。
「そのうち」と思っていた方が、この記事をきっかけに一度調べてみようと思っていただけたなら、これ以上のことはありません。
スタッフ







