【SSRI抗うつ薬】パロキセチンとは?セロトニン再取り込み阻害メカニズムと効果
💉 その他の治療薬|更新日: 2025年9月16日
パロキセチンとは
パロキセチン(Paroxetine)は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI:Selective Serotonin Reuptake Inhibitor)と呼ばれる抗うつ薬の一種です。商品名「パキシル(Paxil)」として知られ、1992年にSmithKline Beecham社(現GSK)によって開発されました。うつ病、パニック障害、社会不安障害、強迫性障害、PTSD、全般性不安障害など多様な精神疾患の治療に使用されています。SSRIの中でも最も強力なセロトニン再取り込み阻害作用を持つのが特徴です。
セロトニン再取り込み阻害メカニズム
1
セロトニン放出
神経終末からセロトニン分泌
2
再取り込み阻害
SERTトランスポーターを選択的阻害
3
濃度増加
シナプス間隙でセロトニン濃度上昇
4
症状改善
抗うつ・抗不安効果発現
他のSSRIとの比較
SSRI特性比較
| 項目 | パロキセチン | セルトラリン | フルボキサミン |
|---|---|---|---|
| SERT阻害力 | 最強(Ki=0.13nM) | 強(Ki=0.29nM) | 中(Ki=2.2nM) |
| 半減期 | 21時間(中程度) | 26時間(長い) | 15時間(短い) |
| CYP2D6阻害 | 強い | 軽微 | 中程度 |
| 抗コリン作用 | 軽度あり | ほとんどなし | ほとんどなし |
| 中断症候群 | 起きやすい | 中程度 | 起きやすい |
パロキセチンの特徴
- 最強のSERT阻害:SSRI中で最も強力な再取り込み阻害
- 広い適応症:6つの精神疾患に適応承認
- 鎮静効果:軽度の抗ヒスタミン作用で不安軽減
- CR徐放製剤:1日1回投与で服薬コンプライアンス良好
- 社会不安に有効:社交不安障害の第一選択薬
- 豊富な臨床データ:30年以上の使用実績
適応症・臨床効果
承認適応症
気分障害
- • うつ病・うつ状態
- • 反復性うつ病性障害
- • 双極性障害のうつ期
不安障害
- • パニック障害
- • 社会不安障害(社交不安障害)
- • 全般性不安障害
その他
- • 強迫性障害(OCD)
- • 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
適応外使用
- • 早漏治療(海外では承認)
- • 更年期のほてり
- • 過敏性腸症候群
臨床効果データ
うつ病
寛解率62%
8週間治療
パニック障害
発作消失87%
10週間治療
社会不安障害
改善率76%
12週間治療
用法・用量
疾患別用量
うつ病・うつ状態
- 初期用量:10-20mg/日(朝食後)
- 維持用量:20-40mg/日
- 最大用量:40mg/日
パニック障害
- 初期用量:10mg/日(朝食後)
- 維持用量:30mg/日
- 最大用量:30mg/日
社会不安障害
- 初期用量:20mg/日(朝食後)
- 維持用量:20-40mg/日
- 最大用量:50mg/日
強迫性障害
- 初期用量:20mg/日(朝食後)
- 維持用量:40mg/日
- 最大用量:50mg/日
💡 服薬の注意点
- • 朝食後服用(消化管刺激を軽減)
- • 1週間ごとに10mg単位で漸増
- • 効果発現まで2-4週間必要
- • 急な中断は避ける(離脱症状のリスク)
- • CR錠は粉砕・咀嚼しない
- • 高齢者・肝障害時は減量
副作用
主要副作用(頻度順)
- 悪心・嘔吐(30-35%)
- 眠気・鎮静(25-30%)
- 口渇(20-25%)
- 便秘(15-20%)
- 発汗増加(15-20%)
- 性機能障害(15-20%)
- 頭痛(10-15%)
- めまい(10-15%)
- 不眠(10-12%)
- 体重増加(8-10%)
重篤な副作用・注意事項
離脱症候群(中断症候群)
- • めまい・電気ショック様感覚・頭痛
- • インフルエンザ様症状・不眠・いらいら感
- • 予防:漸減中止(2-4週間かけて)
セロトニン症候群
- • 高体温・発汗・頻脈・血圧上昇
- • 意識障害・筋硬直・ミオクローヌス
- • MAO阻害薬・トリプタン系薬剤との併用注意
その他の重篤な副作用
- • 自殺企図・自殺念慮の増加(特に若年者)
- • QT延長・不整脈(高用量時)
- • 出血リスク(抗凝固薬併用時)
- • 低ナトリウム血症(SIADH)
重要な注意事項
禁忌・使用不可
- • MAO阻害薬服用中・中止14日以内
- • ピモジド併用中
- • パロキセチンにアレルギーのある方
- • 18歳未満(自殺リスク増加のため)
- • 妊娠中(特に妊娠後期)
- • 緑内障・前立腺肥大症の方(抗コリン作用)
薬物相互作用
- • CYP2D6阻害:コデイン・タモキシフェンの効果減弱
- • ワルファリン:出血リスク増加
- • 三環系抗うつ薬:血中濃度上昇
- • フェニトイン:血中濃度上昇
- • リスペリドン:血中濃度上昇
- • トリプタン系薬剤:セロトニン症候群リスク
特別な注意
- • 治療初期・用量変更時の自殺リスク監視
- • 躁転リスク(双極性障害潜在例)
- • 高齢者:転倒リスク増加
- • 腎機能・肝機能障害時は減量
- • アルコール摂取は避ける
- • 運転・機械操作時の注意
免責事項
※この情報は教育・参考目的で提供されており、医学的アドバイスの代替ではありません。
※精神科薬物の使用前には必ず精神科医・心療内科医にご相談ください。
※個人輸入薬の使用は自己責任となります。特に精神科薬物は慎重な監視が必要です。

